マリオの生みの親である任天堂の宮本 茂氏が作った、Wiiスポーツ、WiiFitに続く、3つ目のキラータイトル、WiiMusicが2008年10月16日に発売されました。年末商戦の目玉として任天堂も猛プッシュを行い、大量のCMも放送されています。
しかし、300万本以上売れているWiiスポーツや、250万以上売れているWiiFitに比べると、どうも売上げがかんばしくないようです。初週売上げで約10万本、その後延びて累計で20万本弱といった状況。この手のソフトは長いスパンで売上げを見るべきではあるのですが、WiiFitは発売初週で約25万本を売り上げていますから、それと比べても少し寂しい数字です。
WiiMusicは何故他の2本に比べて売れていないのか、ゲームの中身の問題なのか、売り方がよくないのか。そもそもWiiMusicってどんなゲームなのかというところから、お話してみたいと思います。
作りこまれたWiiリモコンのジェスチャー (실로 정교한 Wii 리모콘의 움직임)
WiiMusicの基本は、Wiiリモコンのジェスチャーで楽器を演奏するところにあります。太鼓のような打楽器であればWiiリモコンとヌンチャクを振り、叩く動作を真似ることによって音を鳴らすことができます。トランペットやサックスのような管楽器は、笛を吹くように口元で構えて、ボタンを押すことで演奏できます。そのままWiiリモコンの先をあげたりさげたりするジェスチャーで音量を調節し、クレッシェンド(だんだん大きく、という意味の音楽用語)なども表現できます。音程は曲の流れに合わせて勝手に調節されるので、ドレミを考える必要はありません。
ちなみにガイドはトランペットや、パーカッションなどの楽器経験者なのですが、ジェスチャーによる演奏方法は実に良く出来ていて、ちょっとビックリしました。特に、打楽器関連なのですが、実際に太鼓を叩くときと同じ要領で、手首のスナップを利かせて、インパクトの瞬間にWiiリモコンをギュっと握りこんで叩くと、イメージどおりのタイミングで音が鳴ります。速く鋭く叩けば大きい音が、優しく叩けば小さな音で演奏できます。
全く楽器経験のない知人に演奏してもらうと、腕を大きく振って叩くも、中々タイミングがあわずリズムが取れないという状態になりました。これは本物の打楽器を演奏する際、初心者に良く見る光景そのものです。試しに、初心者に叩き方を教えるのと同じように、脇をしめ、腕よりも手首を意識し、叩く瞬間をイメージして握りこむことを教えると、効果てきめんで上手になるではありませんか。
このWiiリモコンを使った操作方法、ユーザーがする動作そのものはシンプルですが、実に良く作りこまれていることが分かります。打楽器の経験者であれば、違和感なく、かなり自在に演奏をすることが可能です。
すぐ飽きるお手軽楽器体験ゲームではない (금방 질리는 간단한 악기 체험 게임은 아냐)
実に良く作られていて、音楽経験者であれば自由自在にアレンジをしながら色んな演奏ができます。反面、初心者がちょっと遊んだだけでは、ガタガタの演奏ができあがるだけ、ということにもなり得ます。それが良く分かるのがミュージッククリップの制作です。
WiiMusicでは、1つの曲をメロディや、ベース、パーカッションといった6つのパートで演奏できるのですが、1つ1つのパートを録音してミュージッククリップを作り上げることができます。最大4人まで、同時に演奏することもできますし、1つ1つのパートを順番に全部自分で演奏して、1つの曲を作り上げることも可能です。
これが音楽を作り上げる面白さそのもので、曲の流れを考えて、盛り上げるところ決めたり、ソロパートを作ったり、かっこよくアレンジしてみたりと、何度も録音しながら自分のイメージに近づけます。リズムを綺麗に揃えて、パートごとに演奏する部分、休む部分を考えて、最後はかっこよく全パート一緒にフィニッシュと、いくらでもこだわって作りこめ、あっと言う間に時間が経ってしまいます。
しかし、音楽初心者がこれをやろうとすると、まず普通に演奏をあわせるところでつまづきます。色んなパートでタイミングや音量を合わせて、音楽的演出を考えながら作りこんでいくというのは、はまりこむ面白さがありますが、敷居も高いのです。
中身とイメージのミスマッチ (내용과 이미지의 미스매치)
演奏の仕方や楽器の組み合わせで自分なりの音楽を作っていくと、実に奥の深い、音楽の面白さの芯の部分に触れることができます。しかしそこまで到達せず、ちょっと遊んでみてうまく演奏できないと、1曲プレイしてみてもその面白さが良く分からないかもしれません。ガイドが考えるに、ここにWiiMusicを売ることの難しさがあります。
WiiMusicは、大人から子供まで、広くライトユーザーに向けてアプローチしています。CMでは家族や友人同士で遊ぶ姿が画面に流れます。しかし、実際には誰でも楽しく遊べるほどの間口の広さは感じられません。むしろ、音楽というものに対する真摯な姿勢が、噛めば噛むほど味の出るプレイングの妙を引き出すゲームです。
WiiMusicは、大人から子供まで、広くライトユーザーに向けてアプローチしています。CMでは家族や友人同士で遊ぶ姿が画面に流れます。しかし、実際には誰でも楽しく遊べるほどの間口の広さは感じられません。むしろ、音楽というものに対する真摯な姿勢が、噛めば噛むほど味の出るプレイングの妙を引き出すゲームです。
WiiMusic発売前の各種メディアによる紹介でも、音楽を作りこんでいく面白さに触れるものはほとんどなかったように思います。多くは気軽に楽器が体験できるゲームとしての紹介です。制作スタッフががおそらくはこだわりにこだわりぬいて作りこんだ、音楽の面白さを体験してもらうというエンターテイメントは、実際のところほとんど伝わっていないのではないでしょうか。
1度売れなくても諦めないのが任天堂 (처음에 잘 팔리지 않아도 포기하지 않는 닌텐도)
WiiスポーツやWiiFitなどと比べず、音楽を作り上げる面白さを体験できるという新しいゲームを、約20万本売り上げたと考えるならば、これはむしろ凄いことです。しかし、任天堂という企業が本領を発揮するのはここからでしょう。
任天堂は、今までに無い斬新な切り口のゲームが、期待していたほど売れなかった場合、ターゲットや売り方などを修正して市場に再投入するということをよくやります。最近の例では、ニンテンドーDS(以下DS)のリズム天国ゴールドがそうでしょうか。
リズム天国ゴールドは続編で、もともとはゲームボーイアドバンス(以下GBA)用のリズム天国というソフトで世に登場しました。リズムにのってボタンを押すだけのシンプルなゲームで、認知度も低く、市場が既にDSへ移行していたこともあり、初週は2万本強。その後、口コミで売上げを伸ばし約25万本まで販売しました。
新規作が25万本いけばもちろんヒットと言って良い部類なのですが、市場の流れを見れば、やはりGBAではなくDS用の方が売れると考えるべきでしょう。そこを修正して再び登場したリズム天国ゴールドは、見事100万本を超える文句なしの大ヒットを飛ばしました。
WiiMusicは既に約20万本を発売し、大掛かりなプロモーションでタイトルの存在そのものはそれなりに広く認知されています。ここからさらに1歩すすんだ、内容に対する認知、面白さを如何に伝えるかという部分が修正されれば、爆発する可能性は大いにあります。ソフトの作りも、導入で初心者が如何に音楽を楽しむかという部分において、まだ改善の余地があるかもしれません。ポテンシャルは十二分に感じるソフトです、きっとまた、次の手を打ってくるのではないでしょうか。